ハリー・オーガスト、15回目の人生


ハリー・オーガスト、15回目の人生 (角川文庫)

20世紀初頭のイギリスが舞台にひかれ、サンプルを読んでみたら止まらなくなって即キンドルで購入。
これは面白かったです。久々のマイ・ベスト小説!
日本人作家だったらこんな発想しないだろうな、という奇想天外の内容。まさしくアイデアの勝利。そして、その突拍子のないアイデアを、破綻がないままひとつの壮大なドラマとして書き上げたのがすごい。

テーマはいわゆる不死と転生でありがち。だけど、同じ人生を何度も記憶を持ったままくり返すのが新鮮。前世の失敗を、二度目の転生で取りもどす。というパターンはよくあるけど、さらに三度、四度、十回……と延々と続きます。
そんな転生する彼ら(ひとりだけじゃない)にも弱点があり、それがラストへの布石になりますが、たったひとつのシンプルな答えを導き出すために、何度も転生して皮肉な友情ごっこをする描写が印象的でした。
まさしく壮大な嘘。だけど、孤独な主人公たちが求める友情は真実でもあります。だから最後までバレなかったのでしょう。
冒頭のメッセージの意味が解ける、ラストに鳥肌が立ちました。それぐらいすごかった。

いろいろフィクションらしい設定があるのですが、とくに秀逸だと思ったのが、「転生単位の伝言ゲーム」。
各々の時代に不死者が存在していて、死ぬ前にまだ幼児の不死者へ伝言。その幼児が老齢になって死ぬ前、またべつの不死幼児へ伝言……。それを繰り返していけば、過去から未来への壮大な伝言になります。過去にあった歴史を不死者たちはそれで知ることができます。
その逆に、幼い不死幼児がこれから死ぬ不死者へ伝言します。その不死者が転生し、また別の老齢不死者へ……と伝言。そうすると、未来のできごとが過去へ伝わります。

それがキーとなり、やがて訪れる世界の破滅を主人公ハリーが知ることから、物語が一気に加速。読み始めたころはどちらかといえば歴史モノっぽいのですが、後半はまさしくSFでした。
だからこれはSFファンタジーです。歴史モノと思って読んでいたら、いい意味で裏切られました。
文章も堅くなくて読みやすかったです。今まで読んだ小説のなかで、トップテン入りするほど面白かった! 翻訳ものに抵抗がなければ、とってもおすすめです。

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