肉体的な人間の限界 高さ・深さ・寒さ・暑さ

小説やマンガ創作の時に、人間の肉体がどれだけ耐えられるかを知ると、リアルさが増します。ありえない無敵系キャラではなく、実在しそうな人物を冒険させたいときの参考に。

高さの限界


1.人間が長期間生活できる限界高度は約5000メートル

人間が定住している最も高い場所は、アンデスのアウカンキルチャ山にある採鉱の町。標高は5340メートル。

2.純粋酸素を呼吸しながらの限界高度は約10,400メートル

民間航空機は高度10,000メートルぐらいを飛行する。
12,000メートルを超えると、肺が酸素を供給できなくなって意識を失い、18,900メートルを超えると血液が体温で沸騰して気化してしまう。気圧が低くなるためである。
もし飛行機の窓が割れたら、吸い込まれるように外へ投げ出され、シートベルトをしていても酸素マスクをすぐに着用しないと、30秒で意識を失う。
高度12,000メートルを飛ぶ戦闘機パイロットは、加圧スーツを着用しないと、脱出時、肺が破裂する危険性がある。

3.登山の限界

標高8,000メートルのエベレスト等、高い山に登山する時は、高山病を防ぐために身体を低い気圧に慣らす必要がある。
高山病の症状が出始めるのは標高3,000メートル。
しばらく滞在すれば身体が慣れるが、標高4,800~6,000メートルを超えると身体が順応できなくなる。
標高7,900メートルを超えると、順応していても危険。そこから先は滞在が2~3時間が限界である。

4.高山病の症状

急に高高度へ登って8~48時間後に始まる。
低酸素でふらつくが、気分が高揚。
その後、目眩、不眠、だるさ、頭痛、食欲不振、嘔吐になり、歩くのも困難になる。
身体が数日で慣れると症状は収まるが、ひどいと肺浮腫、脳浮腫になって命が危うくなる。
酸素を供給しても収まらない場合は、低高度へ降りて症状を改善させるしかない。


深さの限界(潜水)


1.ダイビングの限界

何も無しの状態で潜水するのは2~3分が限度。呼吸ができないため。
およそ8メートルが限界。
7メートルを超えると、水圧で身体が自然と下へ沈むようになるため、自力で浮き上がるのは不可能。

2.スキューバーダイビング

圧縮空気を使ったスキューバーダイビングで、安全に潜水できるのは30メートルまで。
50メートルを超えると、水圧による窒素中毒になり、90メートルで意識を失う。

3.潜水病の症状

急激に上昇(減圧)すると、血液に溶けていた窒素や酸素が気泡になり、毛細血管をつまらせるので危険。
手足がしびれ、最悪、死に至ることも多い。
10メートルを超えると、潜水病の危険性がある。

4.窒素中毒の症状
血液に流れている窒素は、中毒症状のある有害物質。水圧により圧縮を加えることで、毒性が出てくる。
数気圧が肉体に加わると窒素中毒になり、アルコールに酔った状態に似る。手足が痺れるが、高揚感と幻覚で理性を失い、さらに潜って命を失う者もいる。

暑さの限界


1.哺乳類の細胞の限界温度は50℃

細胞が50℃を越える前に暑さから逃れると良いので、90℃のサウナでも短時間なら可能。
空気が乾燥していればさらに高温でも耐えられる。
極端に乾燥した127℃の空間に、20分間いることができたという記録も有る。
しかし、脳は42℃が限界のため、その体温を超えないまでが人間の限界といえる。

2.砂漠での限界

砂漠で水なしだと36時間が限界。
体重の15%以上の水分が失われると、人間は死に至る。
ちなみに駱駝は25%。
砂漠で生き延びるには、日の落ちた夜に行動し、水は水筒ではなく、体内に溜めておくこと。

寒さの限界


1.寒さの限界は曖昧

裸だと氷点下50℃で1分も立たないうちに凍ってしまうが、服でしっかり防寒すると生き延びられる。
低体温症にならないよう、中枢温度が35℃を下回らないようにすればよい。
とくに脂肪が多いと、防寒の役目を果たしてくれるので、生き延びられる可能性がさらに高くなる。

2.低体温症

気温12℃で手足の動きが鈍くなり、8℃以下なると痛みの反応が鈍くなる。
身体の震えで体熱を作り、寒さに耐えられるのは2~3時間ほど。
中枢温度が35℃を下回ると身体が激しく震え、身体がうまく動かず、思考が鈍り、言葉が不明瞭になる。無表情、無気力、無口、忘れやすくなることも。
32℃を下回ると、エネルギーを使い果たし、震えが止まり、意識が朦朧とする。
30℃になると、意識がなくなる。

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3.塹壕足炎

濡れた手足が風にさらされるとしもやけになり、さらに進むと凍傷になる。
第一次世界大戦。気温10℃の塹壕のぬかるみで、足が変色、膨張して凍傷になった兵士たちもいた。
防ぐには常に乾燥させておくことだが、戦場では難しかったよう。
人間は濡れて風に吹かれると、気温がそう低くなくても体温が奪われる。
とくに寒い水中では、低体温症で死ぬ事が多い。

4.凍傷

肌が0℃以下になると凍り、凍傷になる。
とくに耳、鼻、指、つま先である末端が弱い。
軽度だと感覚を失い、日焼けのように表皮がめくれる。重症になると温めても紫色に腫れ上がり、水ぶくれができたのち、黒く固いかさぶたになる。
運が良ければ皮膚は再生するが、組織が死滅していれば切り落とすことになる。

 参考文献


 人間はどこまで耐えられるのか (河出文庫)

その他歴史コラムの紹介
偉人たちの素顔~世界史コラム 


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